デジタル糖度計
最近では、デジタル糖度計などで初乳の濃度を計測してから子牛に与える農家さんも増えてきましたよね!↓↓
初乳中のIgG濃度は、RID(放射免疫拡散法)で測定するそうですがデジタル糖度計で測定したBrix%とは相関関係にあります(A.L. Bartier et al.,2015)。比重計と比べても使いやすくおすすめです↓↓
デジタル糖度計で初乳のBrix%を測定する重要性を考えていこうと思います
復習↓
牛は、母牛から胎盤を通して子牛に抗体(免疫グロブリン)を渡せないため初乳を通して抗体を子牛に与える必要があります(受動免疫)。初乳の摂取によって受動免疫を獲得したかどうかを確認するには、生後24~48時間後の血清中IgG濃度を測定する必要があり、血清中IgG濃度が10mg/ml以下の場合は受動免疫の獲得が不十分な状態(FPT:免疫移行不全)と判断され、FPTの子牛では疾病羅漢率や死亡率が増加します。死亡率はFPTでない子牛に比べ3倍以上という報告もあります(UDSA-APHIS Veterinary Service,1993)
※IgG(免疫グロブリン)
血清中IgG濃度に影響を及ぼす大きな要因は、給与されたIgGの量と出生から初乳給与までの時間と言われています。
図1:血清中IgG濃度はIgG摂取量に比例するため、具体的に血清IgG濃度10mg/ml以上にするには最低でも100g以上IgGを摂取しなくてはいけません(Quigley et al.,1998)
血清IgG濃度10mg/ml以上を達成するためには100g以上のIgGを摂取させる必要があります。次の計算式でIgG摂取量を求めることができます↓↓
初乳中のIgGの濃さ×飲んだ初乳量=IgG摂取量
初乳中のIgGの濃さはBrix%で推測できます→Brix22%=50g/ℓ(IgG濃度)
なので→50g/ℓ(IgG濃度)×2ℓ(飲んだ初乳量)=100g(IgG摂取量) となりBrix22%の初乳を2ℓ与えると目標である100gを達成できます。しかし、子牛の大きさにより必要量が異なるでしょうし、難産や外気温などで吸収率が変化することも考えると100gギリギリよりは3ℓ与えて150gの方が安心できそうです。もちろんもっと飲む意欲があるのであれば飲みたいだけ与えて差し支えないと思います↓↓
50g/ℓ×3ℓ=150g
Brix21%以下の初乳を用いると以下のようになる可能性があります↓↓
35g/ℓ×2ℓ=70g
35g/ℓ×3ℓ=100g
初乳IgG濃度は、産次・初乳量・初回搾乳までの時間などが影響するためキチンと計ってから与えると安心です。
初乳サンプルをデジタルBrix屈折計で分析した結果(アルバータ州中部13農場→サンプル数569)Brix%の平均値(95%信頼区間)が24.3(23.9-24.6)だったそうです(A.L. Bartier et al.,2015)↓↓
最後に実際にデジタル糖度計で測定してから初乳を与えている農家さん(顧客)のデータです。1年間170頭分(ホルスタイン種)を調べた結果Brix%の平均値(±SD)が25.19(±4.49)で、Brix%が22%未満の初乳は全体の25.7%でした↓↓
実際にはBrix18%~21%の初乳は、初乳製剤と混ぜて活用しています↓↓
出生後6時間以内に最低3ℓの初乳を与える(釧路農業研究所によると90%以上の牛が3ℓかそれ以上飲むそうです)のが目標にしていますが、飲みたいだけ飲ませて良いと考えています。1回目におなか一杯になって2回目の時飲みたがらないことは良くありますが問題ないと思います。
参考文献
https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(98)75836-9/fulltext
https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(98)75836-9/fulltext
妊娠率・発情発見率・受胎率
酪農における繁殖管理の目的とは何でしょう?
それはズバリ言ってしまうと妊娠牛を得ることです!
例えば→5頭よりも10頭とより多くの妊娠牛を得た方が良いですよね?
更に→同じ10頭でも10年かけて10頭の妊娠牛を得るのか、1年かけて10頭の妊娠牛を得るのかで意味合いが違ってきますよね?もちろん1年で10頭の方が牧場にとってより利益になります。
つまりより多くしかもより早く妊娠牛を得るそれが繁殖管理の目的!!
そして妊娠牛を得るスピードを数値化したものが妊娠率!!
↑というくだりはもう聞き飽きたという人も多いかもしれません・・・しかしながら受胎率や妊娠率の計算方法は数種類あり混乱している人が多いのも確かです(僕もそうでした)もう一回整理してみようというのが今回のテーマ
妊娠率・発情発見率・受胎率の復習
※妊娠率・発情発見率・受胎率には数種類の計算方法があります今回は、Dairy Comp305に用いられている計算方法について(おそらくU-motionやFarmnoteも同じ)
初めに受胎率ですが・・・受胎"率"と言ってしまっているので混乱してしまいますがここで用いる受胎率というのは実は割合(発生割合)のことです。割合とは何かというと→全体に対する部分を全体で割った値のことで↓
受胎率=妊娠した授精÷授精した総数(妊娠した授精+授精したけど空胎)
となります。図で説明すると↓↓
次に妊娠率
受胎率が割合であることに対し妊娠率(発情発見率も)は"率(発生率)"です。
発生割合と発生率で何が違うかというと発生率では分母に時間の概念が含まれてきます。
つまり妊娠率には時間の概念が含まれる・・・時間の単位は、妊娠率の場合→1サイクル=21日で表します(VWPを過ぎてからサイクル数を数える)※VWP=自発的待期期間
時間の概念が含まれるとはどういう事かというと
例えば→下の図のA牧場とB牧場は、それぞれ3頭づつ牛がいます。幸運にも全て妊娠牛、つまりA牧場:3頭の妊娠牛でB牧場:3頭の妊娠牛になります。2つの牧場とも3頭づつ妊娠牛がいるので繁殖成績は同じとみるべきでしょうか?どうやら違いそうです。何が違うかというと妊娠牛を得るまでのサイクル数つまり時間が違うということになります。
A牧場:3頭の妊娠牛を得るまでのサイクル数→2+3+4=9
B牧場:3頭の妊娠牛を得るまでのサイクル数→5+6+7=18
A牧場の方が3頭の妊娠牛を得るまでのサイクル数が少ない→A牧場の方が妊娠牛を得るスピードが速い↓↓
今度は、実際に妊娠率を計算してみます。
C牧場には、6頭の牛がいて3頭の妊娠牛A牛・B牛・D牛、2頭の空胎牛(授精中もしくはVWPを過ぎて授精できていない牛)C牛・E牛、1頭の死亡してしまったF牛がいます
実際にC牧場の現在の妊娠率を計算していきたいのですがまず妊娠率の計算式から↓
妊娠した頭数÷サイクル数=妊娠率
C牧場では現在、妊娠牛3頭で費やしたサイクル数は14です↓
3÷(1+2+2+4+2+3)×100=21% でC牧場の現時点での妊娠率は21%となります。
ポイントは、妊娠牛のサイクル数だけでなく空胎牛や死亡した牛のサイクル数も含まれているという事です。途中で死亡した牛のサイクル数は死亡した時点のサイクル数のまま動きませんが、空胎牛のサイクル数は妊娠するまでもしくは繁殖中止や死亡するまで増えていきます↓↓
もっともっと具体的に見ていくためについにD牧場が登場します→D牧場には3頭牛がいて2頭妊娠しています。乳牛1は分娩後90日で受胎したので受胎に費やしたサイクル数は2サイクルとなる(VWP後からサイクル数をカウント、D牧場のVWPは50日とする)。乳牛2は分娩後110日で受胎なのでサイクル数は3。乳牛3は分娩後130日(4サイクル)で空胎なので現時点での妊娠率は22%↓↓
時間が経過します(D牧場)
空胎牛である乳牛3の動向が妊娠率に影響してきますが、乳牛3は残念ながら分娩後150日でも空胎のままだったのでサイクル数は5になり牛群の妊娠率は20%に下がってしまいました。このように妊娠率は、空胎牛の現状も含めているので牛群の繁殖成績をリアルタイムで評価していると言えます↓↓
さらに時間が経過します(D牧場)
ついに乳牛3が受胎しました!分娩後日数170日つまりサイクル数6費やして受胎、D牧場は3頭の妊娠牛を得るのに11サイクル費やしたので現在の妊娠率は27%になりました↓↓
下の図は、実際の例です(Dairy Comp 305)↓↓デフォルトは一年間で評価した数値が出ますが、3ヶ月や2年間など期間を変更して評価することも可能です。ちなみに発情発見率は、授精した頭数÷サイクル数で計算できます。
妊娠牛を得るスピードを数値化したものが妊娠率であるなら、視覚化したものが生存曲線であると言えます。下の図は、X牧場(妊娠率19%)とY牧場(妊娠率23%)の生存曲線を比較したものです。最初(分娩後)は、空胎牛100%でどちらの牧場もVWP50日なので分娩後50日からスタート(発情発見と授精)して受胎すると空胎牛が減っていきます。ですので空胎牛が減っていくスピードつまり妊娠牛を得るスピードが速いほどカーブが急になっていきます。どちらの妊娠率も優れていますが19%と23%でY牧場の妊娠率の方が良好なので生存曲線もY牧場の方が急なカーブになっています↓↓
最後に、妊娠率の評価表を上げておきます。VWP後からサイクル数のカウントがスタートするのでVWPの設定(ソフト内の設定)は牧場ごとにするのが重要です。VWPによって妊娠率の評価は若干変わりますが、基本的には発情発見率60%以上妊娠率20%以上が最初の目標になるようです↓↓
妊娠率の話を2011年に開催されたセミナー(富良野)で初めて聞いた時の感動は今でも覚えています。以降セミナーで習った考えを現場でいかしてきましたが、今回のブログはそのセミナーの内容の一部を自分なりにまとめたものです。
参考文献
12時間でのNDF消化率①
CVAS分析センターでは、NIRのオプションで30h120h240hでのNDF消化率に加えて12h消化率も分析出来るようになっているみたいですが、今回のNDSバージョンで12h消化率が加わったようです。
12hの値を加えるとpdNDFプール全体の分解速度(Kd)の値がより正確に計算される。より消化性の高い粗飼料の12h値は曲線(P1+P2+uNDF)を左にシフトし、より速い分解速度(Kd)を示します。 12h値を低くすると、曲線が右にシフトし、分解速度(Kd)が遅くなる。uNDF240には影響しない。
復習
aNDFom・・・NDFに混入している他の栄養分を除去したもの
- 亜硫酸ナトリウム→窒素の除去
- 耐熱性アミラーゼ→澱粉の除去
- 沸騰後に熱焼処理→灰分の除去
pdNDF(消化可能なNDF)・・・aNDFomからuNDF(消化されないNDF)をひいたもので消化の速い分画と遅い分画がある
uNDF(消化されないNDF)・・・100-240時間NDF消化率
P1・・・分解が速い分画 30時間NDF消化率
P2・・・分解が遅い分画 120時間NDF消化率
参考文献
搾乳ロボットに適した牛①
搾乳ロボットに適した牛への改良は何が大切か問題
ロボットに入りづらくなりそうだし、フットワーク軽めだとロボットへのアクセス回数も増えそうなので中型の牛というのは共通だと思う・・・
DPRやPLももちろん大事だと思うが、搾乳ロボットで最も生産寿命に関係するのは乳頭配置や乳房底面だろうなおそらく。後は、蹄や作業効率に関わるとこかな
↓↓DeLavalのVMS装着可能域
↓↓ロボットにあった精液選定の指標にRobot ReadyやRobot Max等ありますが、どのような形質や基準で選択されているのか気になったので調べてみました。下の表はRobot Readyの構成です。これを見ると形質の優先順位が必要なのでは無いだろうか?数値の範囲が広くないか?などの疑問点が浮かびました。Robot Ready や Robot Maxを参考にしつつも精液ごとにもう少し細かく見る必要があるなと個人的には感じています。
産次が進んでくると乳頭配置や乳房底面も変わってくるということもあるので難しいところですよね。
ある獣医さんの顧客は、未経産全頭をゲノムにかけ乳頭配置の良い牛をセレクト→SOV or OPU→ガンガン移植でほぼ乳頭配置が良いであろう(あくまでゲノム結果)牛で新築ロボットを迎えた結果かなり好スタートが切れたらしい・・・
もちろんあくまでも一例なので全ての牧場で上手く行くかはわかりませんが、参考になる例だと思います。
男女比
生命~とか生物~とか良くわからないのでざっくりそれらしいのをまとめてみました(適当で申し訳ございません)
たしか帯広畜産大学の学生は女性の方が多くなったらしいけど確かに生き物系は女性割合が高い!
↓e-Statからデータをもらいました
学部別 | 男 | 女 |
農学部 | 17946 | 13745 |
生物資源科学部 | 4780 | 3866 |
獣医学部 | 2376 | 3110 |
応用生物科学部 | 1645 | 2161 |
農食環境学群 | 1498 | 932 |
畜産学部 | 536 | 628 |
農学生命科学部 | 465 | 317 |
生物生命学部 | 432 | 339 |
動物看護学部 | 167 | 558 |
総合生命科学部 | 253 | 243 |
生物生産学部 | 240 | 209 |
共同獣医学部 | 140 | 113 |
地域創成農学部 | 137 | 17 |
酪農学部 | 10 | 5 |
子牛のTHI(暑熱ストレス)
経産牛では暑熱ストレスを受けるTHIの臨界点(72-78)の研究報告は多くあるが子牛の暑熱ストレスに対するTHIの報告は少ないので研究してみたという論文(査読済み早期公開論文)↓↓
https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(19)31112-9/fulltext
L.Kovácsらの研究(J.Dairy Sci,2019)では、子牛の福祉は、THIが78以上になると損なわれる可能性があり、THI88を超えると強いストレスをうける可能性があると報告しています。
離乳前のホルスタイン種牛(n=16、AGE:46.7±1.8日、日齢範囲:44-49 日、体重:74.3±1.6kg、体重範囲:70.3-78.6kg)
期間:2016年8月15日~8月20日(最初の24時間は馴らしで4日間記録)
THIはハッチ周辺を観測
呼吸数、直腸温度、耳の温度、心拍数、唾液中コルチゾール濃度の5つを評価
図:1は、セグメント回帰を用いてブレークポイントを求めている。P値は、二つの回帰直線に有意な傾きの変化が認められるかどうか(Davies検定)
季節外れの話で大変申し訳ありませんでした。今の時期は、子牛の寒冷ストレスの話題をしなくてはいけませんよね・・・
ちなみに子牛の寒冷ストレスの指標にもTHIは使われるらしく、生後3ヶ月間の平均THIが60以下だと日増体重に影響し、日平均THIが45を下回ると疾病の危険性が増すそうです↓↓
https://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/nosei/chikusan/chikusan_shiken/biotech/c-thimeter.pdf
大学卒業者分野別比率(1999-2014)
農学部がにわかに人気らしい
今後あつい業界の一つが農業だと思うので若い人が興味を持ってくれることはとても良いことですな
↓↓分野別で比率を見てみた(資料:GLOBAL NOTE 出典:UNESCO より作成)
↓↓まぁーそれでも農学系はまだまだレア(資料:GLOBAL NOTE 出典:UNESCO より作成)
まぁ僕は理系では勿論ないし、かと言って文系かといわれたらそんな能力はない感じ、一応昔はスポーツしていたので今ではすっかり体力の無くなった体育会系というとこかな?若い人は優秀な人が多いので勉強せねば・・・
↓↓データ解説(資料:GLOBAL NOTE 出典:UNESCO)
・大学卒業者の分野別比率
・単位は%
・大学はUNESCOの定義する ISCED2011のLEVEL5-8で、大学相当の全ての高等教育機関が含まれる(日本での四年制大学・大学院、短期大学などに相当)
・大学卒業者分野別比率(自然科学分野)
- 自然科学分野の大学卒業者数
- 自然科学分野の分類はISCED-2011のScience項目で生命科学、生物学、物理学、地学、数学、コンピューター科学などを含む
・大学卒業者分野別比率(工学・建築分野)
- 工学・建築分野の大学卒業者数
- 工学・建築分野の分類はISCED-2011のEngineering, manufacturing and construction項目で工学、設計、製造、電子、電気、建築などを含む
・大学卒業者分野別比率(農学分野)
- 農学分野の大学卒業者数
- 農学分野の分類はISCED-2011のAgriculture項目で農業、畜産、林業、水産業、獣医分野などを含む
・大学卒業者分野別比率(医療・福祉分野)
- 医療・健康・福祉分野の大学卒業者数
- 医療・健康・福祉分野の分類はISCED-2011のHealth and welfare項目で
医学、薬学、歯科、看護、ソーシャルサービスなどを含む
・大学卒業者分野別比率(経済・法務・社会科学分野)
- 経済・法務・社会科学分野の大学卒業者数
- 経済・法務・社会科学分野の分類はISCED-2011のSocial sciences, business and law項目で経済学、政治学、心理学、法学、ジャーナリズム、ビジネスマネジメントなどを含む
・大学卒業者分野別比率(教育分野)
- 教育分野の大学卒業者数
- 教育分野の分類はISCED-2011のEducation項目で幼児教育、小学校教育、普通科教育、職業訓練、社会人教育、障害者教育、教育科学などを含む
・大学卒業者分野別比率(サービス分野)
- サービス分野の大学卒業者数
- サービス分野の分類はISCED-2011のServices項目で個人向けサービス(ホテル、旅行、美容など)、輸送サービス(船員、航海学、航空パイロット、鉄道員など)、警備・治安(警察・軍など)を含む
・大学卒業者分野別比率(人文・芸術分野)
- 人文・芸術分野の大学卒業者数
- 人文・芸術分野の分類はISCED-2011のHumanities and arts項目で史学、哲学、言語学、語学、神学、宗教、美術、音楽、映像などを含む