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牛好きな曽根雅弘のブログ。ほとんど牛のおはなしです。

脂肪酸分析してみた

ご存知のように牛乳中には約3.5-4.0%の脂質が含まれています。脂質にはトリグリセリド(中性脂肪)、リン脂質、糖脂質、遊離脂肪酸など数種類存在し牛乳中の脂質は98%-99%がトリグリセリドです。

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図1、トリグリセリド

図1で示したようにトリグリセリドは1分子のグリセロール(グリセリン)に3分子の脂肪酸で形成されていて脂肪酸の種類によってトリグリセリドの性状が異なってきます。

 

図2では牛乳中(バルク中)の脂肪酸の種類と割合を示しました。

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図2、牛乳中の脂肪酸の種類と割合

図2では含まれていませんでしたが通常は牛乳中にC4:0(酪酸)C6:0(カプロン酸)といった短鎖脂肪酸も一定の割合含まれています。

 

牛乳中の脂肪酸割合は、牛の食べる飼料や飼養形態などから影響を受けるそうです。図2はTMR給餌主体の農家さんで図3は昼夜放牧の農家さんです。

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図3、牛乳中の脂肪酸の種類と割合

今回の脂肪酸分析は図2と図3で示した脂肪酸を3つのグループに分けてそれぞれの割合を調べようというものです

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図4、Woolpert et al., 2016より作成 https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(16)30547-1/fulltext

 De novo脂肪酸は主に酢酸から乳腺で生成される脂肪酸。Preformedは体脂肪由来と飼料由来の脂肪酸で分娩後は体脂肪由来の脂肪酸が多くそれ以外は飼料由来の脂肪酸から影響をうけるようです。Mixedは、主に酢酸から乳腺で生成されるものと飼料由来の脂肪酸(バイパスパルミチン酸など)の両方。

 

図2図3では飼料や飼養形態の違いで脂肪酸割合が変化することを示しました。

 

Woolpertらによると高いDe novo脂肪酸の牛群(24.61±0.75g/100g n=19)と低いDe novo脂肪酸の牛群(23.10±0.88g/100g n=20)と比較していて高いDe novo脂肪酸牛群の特徴を示しています→①乳脂率と乳蛋白率が高い②ストールあたりの頭数が110%以下(飼養密度)③1頭あたりの飼槽幅が46cm以上④飼料中の有効繊維(PeNDF)が適正⑤飼料中の油脂が低い(PUFAが多く含まれているとDe novo脂肪酸を低下させる可能性がある)。(Woolpert et al., 2017 https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(17)30296-5/fulltext)

 

以上のことを踏まえてフィードワンさんが脂肪酸分析を始められたらしいので早速出してみました。

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図5、フィードワンさんの脂肪酸分析

図5はフィードワンさんの各脂肪酸グループのガイドラインです。De novo脂肪酸は牛乳中の脂肪酸割合(%)が25%以上、不飽和脂肪酸は0.30以下が推奨されています。

 

先日、全酪連さんのセミナーで講師の方がバルクの乳脂率が常に3.8%を超えている牛群では脂肪酸を調べるメリットは低いとおっしゃっていました。高い乳脂率を保っている牧場や一時的に乳脂率が下がったとしても原因を把握できている場合は脂肪酸まで調べる必要はないのかもしれません。

 

ただ、とても興味深いと感じたので今後の活用方法を考えていきたいと思います。