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牛好きな曽根雅弘のブログ。ほとんど牛のおはなしです。

乳房炎リスク

乳検の体細胞リニアスコア(以下"スコア")をモニターしてグラフ化しています。先月スコア4以下だった牛が今月スコア4以上になると「f:id:kuinige777-8286:20190320192354p:plain乳房炎新規感染リスク牛」先月スコア4以上で今月も引き続きスコア4以上の牛は「f:id:kuinige777-8286:20190320192632p:plain慢性牛」としています。また、分娩後の牛で最初の乳検時にスコア4以上の牛を発症率として折れ線グラフで表している「f:id:kuinige777-8286:20190320193156p:plain分娩後スコア4以上の牛割合」。先月スコア4以下の牛が今月新規でスコア4以上になった牛を発症率として折れ線グラフで表している「f:id:kuinige777-8286:20190320193545p:plain新規でスコア4以上の牛割合」

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乳房炎リスクのモニター(DC305)

↑「f:id:kuinige777-8286:20190320193156p:plain分娩後スコア4以上の牛割合」発症率の目標は10%以下。「f:id:kuinige777-8286:20190320193545p:plain新規でスコア4以上の牛割合」発症率の目標も10%以下。この牧場では分娩後新規でスコア4以上になる牛の割合が多めという事になると思いますので、乾乳時の環境・乾乳時の漏乳・低カル等の疾病・乾乳期乳房炎治療etc.に問題がある可能性がありそうです。

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乳房炎リスクのモニター②(DC305)

↑また違う牧場の状況ですが全体的に早期の対策が必要そうです・・・


発情発見の正確性

繁殖管理において大切なことの一つに発情発見率があると思います。60%以上というのが一つの目安となると思いますが発情発見率が高くても必ずしも妊娠率が高くならない場合があるようです↓↓

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発情発見率59%と高いが妊娠率は16%

原因は様々でしょうが一つに発情発見の正確性があると思います。下に授精間隔を示した表をのせましたが通常牛の発情周期は21日±3日、18-24dayに35%以上授精できているのが目標のようです。再発を正常周期で授精できていると発情発見が正確に行われているという事になります。起点である発情が間違っていても授精間隔が狂ってくる可能性があります。

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授精間隔

↑B牧場では正常周期での授精が12%しか行われておらず連中(1-3day)での授精が11%と高いことからも正確な発情発見が行われていない可能性が高いと言えます(受精卵移植を全体の15%と多く実地している事を考慮しても)。そのことが発情発見率が高くても妊娠率がついてこない原因なのかもしれません。

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発情発見の正確性

A牧場の経産牛では正常周期に35%できていてやはり正常周期で授精すると39%と高い受胎率。活動量計がない状況でこの成績はすごいの一言です。

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授精状況のグラフ、やはり牛は21日周期で発情がくるんだな

↑A牧場の経産牛を授精状況をグラフ化したもの。

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A牧場経産妊娠率68%妊娠率23%

↑A牧場経産の妊娠率23%(VWP50の場合)発情発見率が高く発情発見も正確だと20%は確実に超えてくると思う。

つぎにA牧場未経産の授精間隔を見てみましょう。

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A牧場未経産発情発見の正確性

↑18-24dayで49%授精できている。

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周期で授精できているようだがばらけている?

↑正常周期で授精できているようにみえたが少し長めにみえる。通常経産より-1~2日ほど短いはずなのに・・・

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A牧場未経産自然発情での受胎率とPGでの受胎率

↑そのせいかA牧場未経産では自然発情での受胎率よりもPGでの受胎率の方が高いのかもしれません。

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A牧場経産自然発情での受胎率とPG授精での受胎率

 ※授精間隔のモニターは後期胚死滅や再発情を行った割合など分かりますが今回は発情発見の正確性についてフォーカスしました

中型の牛が良いよね

共進会が好きでショーむけの牛を揃えたい農家さんはべつとして、フリーストールにしろタイストールにしろ大きい牛よりは中型の牛の方が僕は好きです。という話

 

最近は、成熟時体重(3産目の平均体重)が750kgを超える牛は珍しくない状況です(単純に体重の重い牛=大きい牛とするのは語弊があるのかな?体積に脂肪・骨・肉などが加わりますので・・・しかし、ここでは単純に体重にしようと思います。)これ以上牛を大きくする必要があるのでしょうか?フリーストールですと大きくなりすぎるとストールに合わなくなるし蹄への負担も体重と比例します。タイストールでも同じことが言えますよね!?搾乳ロボットであればそもそもロボットに入らなし。あとあと、踏まれると痛いし、直検やりづらい!!

 

中型の牛=成熟時体重650kg前後を目指す。

体重も遺伝的に改良できるらしいそれがBWC!!また変なのが出てきた・・・

2016年8月にBWCの前身であるBSCが発表さる。BSCが+1になると40lb.(約18kg)遺伝的に♀子の体重が増えるらしい。2017年4月からBWCが用いられBSCよりも最近のデータが用いられているので体重に関してより正確になった。

BSC=高さ+強さ+深さ+尻の幅-鋭角性

BWC=高さ+強さ+深さ+尻の幅-鋭角性(各項目の重みづけがBSCとは異なる)

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BWCと他の項目の相関関係(2018年)

https://aipl.arsusda.gov/reference/nmcalc-2018.htm

 

 BWCとPL,HTH$など健康や繁殖との項とはほとんど相関なし、LIVとは弱い負の相関があることを示していて、注目すべきは乳量とはほとんど相関ないいう事。遺伝率は40%と高い!!なんか重要な項目に思えてきた。BWCの数字が低い牛を授精することによりに疾病が少なく長く残ってくれる牛が増え乳量も増えるのかもしれない。

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7H11351(スーパーサイヤー)のBWC

後、最近注目のFE(飼料効率)。体積が多いとそれだけ維持エネルギーが余分にかかる(ME(代謝エネルギー)と体積は-0.28と負の相関をを示す)乳量と体積には相関関係がないのでより体積の小さい牛が飼料効率が高いと言える。FEとBWCには密接な関係がありそうだ。

ただ、BWCの数字を確認できない場合もあると思いますのでそういう時は↓↓

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体型の項目から中型の牛を目指す(スーパーサイヤーの体型項目)

高さ・強さ・深さの数字が出来るだけばらけず3つの項目が真ん中より(0に近い)の方が良いと思います。更に個人的にはマイナスでも良いのかなと思っています。
遺伝率も高いですしね↓↓

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各項目の遺伝率

 

http://my.selectsires.com/public/bull-pages?AnimalIdentifier=7H11351&Language=Eng&Country=USA

改良状況をモニターする

牛群改良にゲノム検査を用いることの有用性については否定できないと思いますが、やはり遺伝よりも飼養管理の改善の方がより牛のパフォーマンスを引き出すと思いますしそもそも後継牛が豊富にいる状態でないとゲノム検査の効果が薄いのではないかと思います。

 

まずは今授精している精液での改良状況・方向性を確認しておくことが大切だと思うので経産牛と未経産牛に授精した精液の能力平均をそれぞれだしてみました。

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経産牛一年間の精液での改良状況(DC305)

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経産牛一年間の精液での改良状況(グラフ)

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未経産牛一年間の精液での改良状況(DC305)

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未経産牛一年間の精液での改良状況(グラフ)

↑能力・健康・体型とざっくり出してくれるのでとても便利です。

 

ゲノム検査はやくやってみたいなぁ~もうすぐやってみる予定だけど・・・たぶん。

 

しかし、なにげに一番ドキドキするのが親子判定!きちんと責任もって授精していたとしても人間だからねw

Wellnessのはなし⑤

アメリカのホルスタイン協会でDWP$TOP100,WT$TOP50,CW$TOP50それぞれ2018年12月の成績がのっていますのでのぞいてみてください。以下抜粋したものを載せておきます。

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DWP$(2018年12月)

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WT$(2018年12月)

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CW$(2018年12月)

WWSやSEMEXはZoetisのWellness見れますがABSやAltaは上記のランキングで確認するのが良いかもしれません。調べる方法が他にあるかもしれませんが・・・

 

Wellnessのはなし④

子牛のWellness(CW$)

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Zoetis社の子牛のWellness

子牛の呼吸器系疾患は生後から一年間、子牛の下痢は生後から50日(哺育期間)の子牛の疾病が遺伝で差が出るという事なのか凄いな。免疫遺伝子なんだろうか?

 

WT$と同じようにSTAで表記↓↓

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子牛のWellness、STAで表記

子牛の生存能力・子牛の下痢・子牛の呼吸器系疾患→CW$での重みづけ↓↓

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CW$重みづけ

CWP$での割合↓↓

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CWP$でのCW$の割合は8%

 . https://www.zoetisus.com/animal-genetics/media/documents/clarifide-resources/clr-00293_calf_wellness_tech_bulletin.pdf

Beyond the Bull - Calf Wellness Traits.docx

 

Wellnessのはなし③

さらにさらに、Zoetis社にはDWP$(Dairy Wellness Profit Dollars)なるものがあるらしい・・・従来のCDCB公表のNM$(ネットメリット)にWT$(Zoetis社の6つの健康形質、乳房炎・跛行・子宮炎・ケトーシス・後産停滞・四変)を加えた経済価値なのだそうだ↓↓

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2018年時点のNM$とDWP$の比較

※US=乳房項目、BWC=体重項目、FLC=脚項目、DPR=娘牛妊娠率、CCR=経産牛受胎率、HCR=育成牛受胎率、CA$=分娩能力、PL=生産寿命、LIV=生存能力、SCS=体細胞、MAST=乳房炎、METR=子宮炎、DA=四変、RETP=後産停滞、KETO=ケトーシス、MFEV=低カルシウム血症、Lameness=跛行、Calf LIV=子牛の生存能力、Calf RESP=子牛の呼吸器系疾患 Calf scours=子牛の下痢

 

注意しないといけないのはNM$のWellnessはCDCBのWellnessってことね。後、しれっと出てきた子牛のWellnessに関してはまた今度。

 

NM$よりDWP$のほうがより健康管理形質の割合が多いように感じるがDPR・PL・LIVの割合が減ってWellnessの占める割合が多い。遺伝率も低くまだなんだかよくわからないWellnessをこんなに重要視してよいのか?DPR・PL・LIVの方が遺伝率も高いし遺伝率抜きにしてもDPR・PL・LIV特にDPRの方が重要だと思うのだが・・・

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他のインデックスとの比較

確かにNTPやLPIよりTPIの方が健康管理形質が多いので好きなのだけどもDWP$をうのみにしても良いのか疑問。

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NM$とDWP$の生涯収益性の比較


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↑NM$よりもお金になるよと言いたいみたいだね。

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NM$と比較してPL・DPRの改良能力に差はない⁉

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う〜んPLとDPRの遺伝的改良は差がないみたいなこと言ってるしやっぱりDWP $って凄いのかな?まだよくわからん^_^