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牛好きな曽根雅弘のブログ。ほとんど牛のおはなしです。

搾乳ロボットの蹄病状況

搾乳ロボットとてい蹄病に関しては以前の記事に書きました↓↓

 

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ある搾乳ロボット農場(AMS2台、経産牛170頭)の削蹄時蹄病状況(7/12/19~7/11/20)↓↓

 

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搾乳ロボット牛舎の削蹄時蹄病状況(7/12/19~7/11/20)

 

蹄病だけ抜き出してみた↓↓

 

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削蹄時蹄病状況で蹄病のみ抜き出してみた(7/12/19~7/11/20)

 

分娩後日数ごとに並べてみた↓↓

 

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蹄病のみを抜き出して分娩後日数に並べ替え(7/12/19~7/11/20)

 

削蹄とは別に蹄病治療を行った牛(7/12/19~7/11/20)↓↓

 

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削蹄とは別に蹄病治療を行った牛(7/12/19~7/11/20)

 

蹄病治療を行った牛を分娩後日数で並べ替え(7/12/19~7/11/20)↓↓

 

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蹄病治療を行った牛を分娩後日数に並べ替え(7/12/19~7/11/20)

 

 

12時間でのNDF消化率②

 

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↑↑NDSでは粗飼料のNDFD12時間を入れることによりMEやMPに影響するみたいだが、DairylandlabのHPを見てみると、中・低品質アルファルファ(>42NDF)や牧草、トウモロコシサイレージではNDFD12 時間から得るものはほとんどないと書かれていた。では何に使うかというと、高品質の牧草やアルファルファを見分けるためらしい。 例えば、高品質アルファルファ(<32NDF)に含まれる消化可能なNDFの90%以上が30時間前に急速に消化されているのでNDFD12時間を用いて評価するという事らしい↓↓

 

https://www.dairylandlabs.com/media-library/articles/1572457686.pdf

 

個人的には、デンプン粕の12h値を調べてみたいですね↓↓

https://www.dairylandlabs.com/media-library/articles/1572457788.pdf

産次数とBrix%

一般的には、IgG濃度は産次が進むにつれて高くなる傾向にあるらしい理由として↓↓

 

・産次が進むとそれだけ様々な抗原にさらされるため抗体のレベルが高くなる。

・特に初産は、乳腺の発達が少なくIgGの乳腺への輸送能力が低下する可能性がある。

 

ただ、初産と二産は変わらなくて三産以上で高くなる、初産・二産・三産変わらず四産以上で高くなるという報告もある。

 

前回のブログで紹介した初乳Brix%のデータ(ホルスタイン種 n=170)を用いて産次でBrix%に違いがあるのか調べてみました↓↓

 

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産次ごとのBrix%↓↓ 

 

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五産以上の牛の頭数が少ないので四つの産次にまとめた↓↓ 

 

  平均 標準偏差 頭数
初産 24.3 3.17 53
二産 24.0 4.84 40
三産 25.2 4.79 30
四産以上 27.2 4.69 47

 

正規分布の確認→ヒストグラム確率密度関数↓↓ 

 

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視覚的には・・・あやしいのもある⁉

 

正規性の検定を行う→Shapiro-Wilk検定↓↓

  p値
初産 0.70
二産 0.09
三産 0.57
四産以上 0.22

 

検定の結果、すべて正規分布であることが棄却されませんでした。

 

等分散性の確認のためBartlett検定を行った↓↓

 

Bartlett's K-squared = 10.444, df = 3, p-value = 0.01514

 

等分散性を仮定することができなかった(p<0.05)→一元配置分散分析をWelchの方法で行った(すべての群の平均値が等しいかどうか)↓↓

 

F値 = 4.9254, 分子の自由度 = 3.000, 分母の自由度 = 79.706, p値 =0.003441

 

平均値に有意差が認められた(p<0.01)

 

どの群の平均が異なるかを知りたいので多重比較を行う→等分散でなかったのでGames-Howell法を用いた↓↓

※ググったらPMCMRplusというパッケージで出来るみたいですが僕には良くわかりませんでした。もう一回ググるとuserfriendlyscienceの使い方が乗っていたので今回は、これでやってみました。

 

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四産以上と初産の平均値の差は2.952で、p値は0.003(p<0.01)で有意差が認められた

四産以上と二産の平均値の差は3.206で、p値は0.013(p<0.05)で有意差が認められた

 

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この牧場は、未経産の飼養管理レベルが高い・初産分娩月齢にバラつきが少ない・分娩予定一ヶ月くらい前からMP高く(13000gくらい)調整しているのが初産のBrix%が安定している理由なのかも?単純に初産の初回乳量が他の産次に比べ少ないので濃度で見ると変わらなくなるのかな?今回は、初回乳量までは調べていませんが

 

※初乳IgG濃度は、産次だけでなく乾乳日数だとか季節とか初回乳量とか分娩から搾乳までの時間とか牛の体調とか・・・なども関係してくると思う、つまり今回の検定結果は背景が異なるデータを用いている

 



参考文献

 

www.yodosha.co.jp

 

 

https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(08)71414-0/fulltext




 

デジタル糖度計

最近では、デジタル糖度計などで初乳の濃度を計測してから子牛に与える農家さんも増えてきましたよね!↓↓

 

 

アタゴ ポケット糖度計 PAL-1

アタゴ ポケット糖度計 PAL-1

  • メディア: Tools & Hardware
 

 

初乳中のIgG濃度は、RID(放射免疫拡散法)で測定するそうですがデジタル糖度計で測定したBrix%とは相関関係にあります(A.L. Bartier  et al.,2015)。比重計と比べても使いやすくおすすめです↓↓

 

 

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出典:Journal of Dairy Science Vol. 98, 1878-1884, 2015

 

デジタル糖度計で初乳のBrix%を測定する重要性を考えていこうと思います

 

復習↓

 

牛は、母牛から胎盤を通して子牛に抗体(免疫グロブリン)を渡せないため初乳を通して抗体を子牛に与える必要があります(受動免疫)。初乳の摂取によって受動免疫を獲得したかどうかを確認するには、生後24~48時間後の血清中IgG濃度を測定する必要があり、血清中IgG濃度が10mg/ml以下の場合は受動免疫の獲得が不十分な状態(FPT:免疫移行不全)と判断され、FPTの子牛では疾病羅漢率や死亡率が増加します。死亡率はFPTでない子牛に比べ3倍以上という報告もあります(UDSA-APHIS Veterinary Service,1993)

※IgG(免疫グロブリン)

 

血清中IgG濃度に影響を及ぼす大きな要因は、給与されたIgGの量と出生から初乳給与までの時間と言われています。

 

図1:血清中IgG濃度はIgG摂取量に比例するため、具体的に血清IgG濃度10mg/ml以上にするには最低でも100g以上IgGを摂取しなくてはいけません(Quigley et al.,1998)

 

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図1 出典:Journal of Dairy Science Vol. 81, No. 10, 1998

 

血清IgG濃度10mg/ml以上を達成するためには100g以上のIgGを摂取させる必要があります。次の計算式でIgG摂取量を求めることができます↓↓

 

初乳中のIgGの濃さ×飲んだ初乳量=IgG摂取量

 

初乳中のIgGの濃さはBrix%で推測できます→Brix22%=50g/ℓ(IgG濃度)

 

なので→50g/ℓ(IgG濃度)×2ℓ(飲んだ初乳量)=100g(IgG摂取量) となりBrix22%の初乳を2ℓ与えると目標である100gを達成できます。しかし、子牛の大きさにより必要量が異なるでしょうし、難産や外気温などで吸収率が変化することも考えると100gギリギリよりは3ℓ与えて150gの方が安心できそうです。もちろんもっと飲む意欲があるのであれば飲みたいだけ与えて差し支えないと思います↓↓

 

50g/ℓ×3ℓ=150g

 

Brix21%以下の初乳を用いると以下のようになる可能性があります↓↓

 

35g/ℓ×2ℓ=70g

35g/ℓ×3ℓ=100g

 

初乳IgG濃度は、産次・初乳量・初回搾乳までの時間などが影響するためキチンと計ってから与えると安心です。

 

初乳サンプルをデジタルBrix屈折計で分析した結果(アルバータ州中部13農場→サンプル数569)Brix%の平均値(95%信頼区間)が24.3(23.9-24.6)だったそうです(A.L. Bartier  et al.,2015)↓↓

 

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出典:Journal of Dairy Science Vol. 98, 1878-1884, 2015

 

最後に実際にデジタル糖度計で測定してから初乳を与えている農家さん(顧客)のデータです。1年間170頭分(ホルスタイン種)を調べた結果Brix%の平均値(±SD)が25.19(±4.49)で、Brix%が22%未満の初乳は全体の25.7%でした↓↓

 

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実際にはBrix18%~21%の初乳は、初乳製剤と混ぜて活用しています↓↓

 

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出生後6時間以内に最低3ℓの初乳を与える(釧路農業研究所によると90%以上の牛が3ℓかそれ以上飲むそうです)のが目標にしていますが、飲みたいだけ飲ませて良いと考えています。1回目におなか一杯になって2回目の時飲みたがらないことは良くありますが問題ないと思います。
 

 参考文献

https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(98)75836-9/fulltext

https://www.journalofdairyscience.org/article/S0022-0302(98)75836-9/fulltext

 

 

 

 

 




 

 

妊娠率・発情発見率・受胎率

酪農における繁殖管理の目的とは何でしょう?

 

それはズバリ言ってしまうと妊娠牛を得ることです!

 

例えば→5頭よりも10頭とより多くの妊娠牛を得た方が良いですよね?

 

更に→同じ10頭でも10年かけて10頭の妊娠牛を得るのか、1年かけて10頭の妊娠牛を得るのかで意味合いが違ってきますよね?もちろん1年で10頭の方が牧場にとってより利益になります。

 

つまりより多くしかもより早く妊娠牛を得るそれが繁殖管理の目的!!

 

そして妊娠牛を得るスピードを数値化したものが妊娠率!!

 

↑というくだりはもう聞き飽きたという人も多いかもしれません・・・しかしながら受胎率や妊娠率の計算方法は数種類あり混乱している人が多いのも確かです(僕もそうでした)もう一回整理してみようというのが今回のテーマ

 

妊娠率・発情発見率・受胎率の復習

 

※妊娠率・発情発見率・受胎率には数種類の計算方法があります今回は、Dairy Comp305に用いられている計算方法について(おそらくU-motionやFarmnoteも同じ)

 

初めに受胎率ですが・・・受胎"率"と言ってしまっているので混乱してしまいますがここで用いる受胎率というのは実は割合(発生割合)のことです。割合とは何かというと→全体に対する部分を全体で割った値のことで↓

 

受胎率=妊娠した授精÷授精した総数(妊娠した授精+授精したけど空胎)

 

となります。図で説明すると↓↓

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次に妊娠率

 

受胎率が割合であることに対し妊娠率(発情発見率も)は"率(発生率)"です。

 

発生割合と発生率で何が違うかというと発生率では分母に時間の概念が含まれてきます。

 

つまり妊娠率には時間の概念が含まれる・・・時間の単位は、妊娠率の場合→1サイクル=21日で表します(VWPを過ぎてからサイクル数を数える)※VWP=自発的待期期間

 

時間の概念が含まれるとはどういう事かというと

 

例えば→下の図のA牧場とB牧場は、それぞれ3頭づつ牛がいます。幸運にも全て妊娠牛、つまりA牧場:3頭の妊娠牛でB牧場:3頭の妊娠牛になります。2つの牧場とも3頭づつ妊娠牛がいるので繁殖成績は同じとみるべきでしょうか?どうやら違いそうです。何が違うかというと妊娠牛を得るまでのサイクル数つまり時間が違うということになります。

 

A牧場:3頭の妊娠牛を得るまでのサイクル数→2+3+4=9

B牧場:3頭の妊娠牛を得るまでのサイクル数→5+6+7=18

 

A牧場の方が3頭の妊娠牛を得るまでのサイクル数が少ない→A牧場の方が妊娠牛を得るスピードが速い↓↓

 

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今度は、実際に妊娠率を計算してみます。

 

C牧場には、6頭の牛がいて3頭の妊娠牛A牛・B牛・D牛、2頭の空胎牛(授精中もしくはVWPを過ぎて授精できていない牛)C牛・E牛、1頭の死亡してしまったF牛がいます

 

実際にC牧場の現在の妊娠率を計算していきたいのですがまず妊娠率の計算式から↓

 

妊娠した頭数÷サイクル数=妊娠率

 

C牧場では現在、妊娠牛3頭で費やしたサイクル数は14です↓

 

3÷(1+2+2+4+2+3)×100=21% でC牧場の現時点での妊娠率は21%となります。

 

ポイントは、妊娠牛のサイクル数だけでなく空胎牛や死亡した牛のサイクル数も含まれているという事です。途中で死亡した牛のサイクル数は死亡した時点のサイクル数のまま動きませんが、空胎牛のサイクル数は妊娠するまでもしくは繁殖中止や死亡するまで増えていきます↓↓

 

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もっともっと具体的に見ていくためについにD牧場が登場します→D牧場には3頭牛がいて2頭妊娠しています。乳牛1は分娩後90日で受胎したので受胎に費やしたサイクル数は2サイクルとなる(VWP後からサイクル数をカウント、D牧場のVWPは50日とする)。乳牛2は分娩後110日で受胎なのでサイクル数は3。乳牛3は分娩後130日(4サイクル)で空胎なので現時点での妊娠率は22%↓↓

 

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時間が経過します(D牧場)

 

空胎牛である乳牛3の動向が妊娠率に影響してきますが、乳牛3は残念ながら分娩後150日でも空胎のままだったのでサイクル数は5になり牛群の妊娠率は20%に下がってしまいました。このように妊娠率は、空胎牛の現状も含めているので牛群の繁殖成績をリアルタイムで評価していると言えます↓↓

  

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さらに時間が経過します(D牧場)

 

ついに乳牛3が受胎しました!分娩後日数170日つまりサイクル数6費やして受胎、D牧場は3頭の妊娠牛を得るのに11サイクル費やしたので現在の妊娠率は27%になりました↓↓

 

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下の図は、実際の例です(Dairy Comp 305)↓↓デフォルトは一年間で評価した数値が出ますが、3ヶ月や2年間など期間を変更して評価することも可能です。ちなみに発情発見率は、授精した頭数÷サイクル数で計算できます。

 

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妊娠牛を得るスピードを数値化したものが妊娠率であるなら、視覚化したものが生存曲線であると言えます。下の図は、X牧場(妊娠率19%)とY牧場(妊娠率23%)の生存曲線を比較したものです。最初(分娩後)は、空胎牛100%でどちらの牧場もVWP50日なので分娩後50日からスタート(発情発見と授精)して受胎すると空胎牛が減っていきます。ですので空胎牛が減っていくスピードつまり妊娠牛を得るスピードが速いほどカーブが急になっていきます。どちらの妊娠率も優れていますが19%と23%でY牧場の妊娠率の方が良好なので生存曲線もY牧場の方が急なカーブになっています↓↓

 

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最後に、妊娠率の評価表を上げておきます。VWP後からサイクル数のカウントがスタートするのでVWPの設定(ソフト内の設定)は牧場ごとにするのが重要です。VWPによって妊娠率の評価は若干変わりますが、基本的には発情発見率60%以上妊娠率20%以上が最初の目標になるようです↓↓

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妊娠率の話を2011年に開催されたセミナー(富良野)で初めて聞いた時の感動は今でも覚えています。以降セミナーで習った考えを現場でいかしてきましたが、今回のブログはそのセミナーの内容の一部を自分なりにまとめたものです。

 

参考文献

dairyjapan.com

thms.jp

12時間でのNDF消化率①

CVAS分析センターでは、NIRのオプションで30h120h240hでのNDF消化率に加えて12h消化率も分析出来るようになっているみたいですが、今回のNDSバージョンで12h消化率が加わったようです。

 

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12hの値を加えるとpdNDFプール全体の分解速度(Kd)の値がより正確に計算される。より消化性の高い粗飼料の12h値は曲線(P1+P2+uNDF)を左にシフトし、より速い分解速度(Kd)を示します。 12h値を低くすると、曲線が右にシフトし、分解速度(Kd)が遅くなる。uNDF240には影響しない。

 

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復習

aNDFom・・・NDFに混入している他の栄養分を除去したもの

  • 亜硫酸ナトリウム→窒素の除去
  • 耐熱性アミラーゼ→澱粉の除去
  • 沸騰後に熱焼処理→灰分の除去

 

pdNDF(消化可能なNDF)・・・aNDFomからuNDF(消化されないNDF)をひいたもので消化の速い分画と遅い分画がある

 

uNDF(消化されないNDF)・・・100-240時間NDF消化率

 

P1・・・分解が速い分画 30時間NDF消化率

 

P2・・・分解が遅い分画 120時間NDF消化率

 

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参考文献

https://www.rumen.it/newsletter/view/544